目次
- そもそも痙攣(けいれん)とは?
- てんかん発作を動画でみる
- 犬・猫のてんかんとはどんな病気?
- てんかんの症状
- てんかんの種類と原因
- 精神的ストレスはてんかんになりやすい?
- てんかんになりやすい犬種
- 特発性てんかんの多い犬種
- てんかん発作がおこった際の、飼い主の対処
- 意識があるかを確認する
- 細かく記録しておきましょう
- 獣医師にみせるために動画をとっておきましょう
- けいれんが長くつづく場合は大至急動物病院へ
- 病院でおこなわれる診察や治療
- 1.問診や身体検査
- 2.神経の検査と血液検査
- 3.CTやMRI検査などで病変部位を特定できることも
- かかる検査費用と治療費、お薬代
- てんかんのお薬の副作用はある?
- 人間の抗てんかん剤を飲ませてもいいの?
- けいれんが30分など長く続く場合
- まずは落ち着いて対処して
そもそも痙攣(けいれん)とは?
こちらのわんちゃんは寝ているときに、足がピクピクと動いていますね。足など部分的にピクピク動くのもけいれんの一種です。
体の一部(足)がピクピク動いているけいれんの動画
てんかん発作を動画でみる
筆者の飼っているチワワが初めてけいれんを起こした際、それが「けいれん」であることすらわかりませんでした。チワワ特有のプルプルした震えとは違い、頭や全身がふらつき、動かない(動けない?)感じです。動画でみるとわかりやすいのでこちらで確認してください。
小型犬(チワワ)のてんかんの動画
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大型犬(ゴールデン・レトリバー)のてんかん発作の動画
ほかの脳の病気も考えられます。次の関連リンクで確認してみてください。
犬や猫が痙攣をおこす、意識を失う場合に疑う病気の症状とその対処法
痙攣(けいれん)を起こしたり意識を失うような病気はそれほど多くはありませんが、急を要するものが多いので注意が必要です。観察のポイントや病気の症状、考えられる主な病気を紹介します。
犬・猫のてんかんとはどんな病気?
てんかんとは脳と神経の病気で、突然意識をなくしたり、前の動画のように全身や足などの部位がふるえて痙攣(けいれん)するといった発作が数十秒ほどつづきます。てんかん発作後は重篤でない場合ふつうの状態にもどりますが、1日に数回から1ヶ月に何度もおこる場合があります。1分ほどで落ちついてきて、2分ほどでこちらがびっくりするほどけろっとしていたりします。
ほぼ全ての哺乳動物に起こりうる脳の病気で、猫では 0.1~0.5%、犬では全体で 1~2%、特に人気 の純血種ともなれば 5%を超える割合で発症するとも言われています。
てんかんの症状
四肢を硬直させてけいれんをおこし、症状の程度により意識をなくして倒れます。口から泡をふいたり、うんちやおしっこを漏らすことも。発作はふつう数十秒でおさまり、まるで何もなかったかのようにけろっとして平常に戻りますが、ときには発作ののちに異常な食欲をみせたり、大量の水を飲んだり、昏睡状態になることがあります。
軽度の場合は様子をみても良いかもしれませんが、発作の頻度が多い場合や、けいれんが長くつづく場合は命にかかわる危険性もあるので、早めに獣医師に相談する必要があります。
- 徘徊
- ふらつき
- けいれん
- 涎(よだれ)をたらす
- 筋肉の硬直
- 失禁(うんち、おしっこをもらす)
- 落ち着きがない
- 口や足をふるわせる
- 瞳孔が開く
てんかんの種類と原因
てんかんのけいれん発作をおこす症状はさまざまな原因でおこり、大きく「特発性てんかん(真性てんかん)」と「症候性てんかん」のふたつに分類されます。
特発性てんかんとは、基礎疾患がなく脳波検査以外には異常が見つからないもの、うまれつき脳に異常のある場合をいい、比較的発生頻度の高い犬種がいくつか知られています。(後述)多くの場合、1~3歳くらいまでに発生しますが、生後6カ月~5歳の犬にも特発性てんかんが見られることもあります。
対して、CTやMRIなどの画像診断によって脳の奇形や腫瘍などの構造的な異常が見つかるケース、肝不全や腎不全、循環器・ 呼吸器の疾患により低酸素状態を起こすようなケースでも痙攣発作を起こすことがあり、これらを 「症候性てんかん」と呼びます。
もともとの疾患が治療可能であれば発作症状を軽減できるかもしれませんが、すでに脳組織にダメージがあると神経症状は継続することになります。
(1歳未満の子犬がてんかんを起こす場合は、水頭症などの疾患を疑いがあります。5歳以降の成犬では低血糖や脳腫瘍の可能性があります。)
精神的ストレスはてんかんになりやすい?
人間でも犬でも猫でも、ストレスによって、自律神経のバランスを崩します。自律神経のみだれは、ホルモンバランスが崩れたり、血流が悪くなったりするため、病気にもかかりやくなります。このような背景のもと、精神的なストレスなどが脳に影響をあたえることで発症することがあります。
てんかんになりやすい犬種
先天的または後天的要因に起こるてんかん、として考えると、年齢や犬種は関係なく、どんな犬でも発症する可能性があります。その中でも特に「てんかんになりやすい犬」とすると次の犬種があげられます。
特発性てんかんの多い犬種
- ダックスフント
- ビーグル
- コリー
- ゴールデンレトリバー
- ジャーマンシェパード
- ラブラドールレトリバー
- ミニチュアシュナウザー
- プードル
- セントバーナード
- シベリアンハスキー
- コッカースパニエル
- アイリッシュセッター
など、「レトリバー系」「テリア系」の犬種も遺伝的なてんかんの要素を持っているといわれています。
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てんかん発作がおこった際の、飼い主の対処
はじめててんかん発作をおこした場合、飼い主さんはびっくりしてしまうかもしれません。病院につれていくことも大切ですが、診断をするにあたり重要なことがいくつかありますので、対処法を知っておきましょう。
意識があるかを確認する
発作の種類を見分ける重要な点は、「意識が残っているかどうか」と「全身のけいれんを起こしているのかどうか?」の2点です。わんちゃんの様子がおかしいなと気づいた時点ですぐに声をかけてください。こちらを振り返るのか、飼い主さんの目を見てくれるのかを確認します。そして、その後の発作の状態によっては常に声をかけて行く必要があります。意識があるかどうかは、発作の型をみわけるのに非常に重要なことです。
細かく記録しておきましょう
初めての発作はいつか、そこから、いつどのような状態で、どれくらいの長さ、間隔で起こったかを記録しておきましょう。動物のてんかん発作の型を決める上で非常に重要になります。
- 初めての発作はいつからか
- さいきん発作がおこったときの年齢
- どの部位がけいれんしているか
- 発作をおこしたときは何をしていたか
- それからどうなったのか
- 意識があるかどうか
- 始まりから終わりまでどれくらいの長さか
- 発作のあとはどうなったか
- 完全に回復するまでに何分くらいかかったか
- 発作を起こす前に普段とちがう行動があったか
獣医師にみせるために動画をとっておきましょう
てんかん発作の場合、初めて見たときは死んでしまうんじゃないかと驚きますが、少し経つとケロッとしているので症状を獣医師に見せることが難しいです。(けいれんの症状にも種類がある)動物病院にかかるために、動画を撮っておくことをおすすめします。
けいれんが長くつづく場合は大至急動物病院へ
けいれんが10分以上続いたり、意識が戻らないうちに次の発作を起こすのを繰り返している場合※には至急病院へ連れて行きましょう。命にかかわる重大な状態かもしれません。また治療が遅れると後遺症が残ることがあります。
※ てんかん重積状態…発作から回復しないまま次の発作を繰り返す状態。初めて起こした発作からてんかん重積状態になる場合もある。
病院でおこなわれる診察や治療
1.問診や身体検査
問診による飼い主さんからの申告と、発作の開始からすべてが撮影できていればその映像が診断の助けになります。
2.神経の検査と血液検査
診察の結果、発作だと確認でき、その頻度によって神経の検査と血液検査を行います。神経の検査で発作以外の異常がなく、血液検査で発作を起こす脳以外の異常がないことが確認出来たら、てんかんと臨床診断してよいでしょう。
3.CTやMRI検査などで病変部位を特定できることも
ご予算次第では真っ先にCTやMRI検査をおこなうことがベストかもしれませんが、MRIや脳波検査といった特殊な検査装置の利用や専門医による検査となるため、費用もかなりかかります。また、一般の動物病院には設備がなく専門医もいませんので、セカンドピニオンで専門の病院にお任せすることになります。
脳波検査では全身麻酔をする必要があり、鎮静剤の副作用で嘔吐することがあるので、検査当日は絶食での来院が必要となります。
様々な理由から、犬種や臨床症状(神経学的症状の有無)、血液検査だけで、ある程度の判断がなされて投薬治療を開始される事も往々にしてあることです。
てんかんと診断され、投薬治療をはじめたにも関わらず、発作の程度が思うように減らない場合は、あらためて専門病院でさらに脳の詳しい検査で診断を見直すことで、結果、別の病気が見つかることもあれば、難治性てんかんという通常の治療では効果が十分得られないてんかんということもあります。
かかる検査費用と治療費、お薬代
初診料や再診料…1,000円〜2,000円程度。
一般血液検査…2,000円程度のお値段。
なので検査をする最初の1~2カ月は月2~3万円、その後状態が安定していれば月5,000円~10,000万円程度を一つの目安にしておくと良いです。
お薬の価格は通常3,000円〜5,000円/月くらいです。
CTやMRI検査をおこなう場合、CT3万くらい、MRI検査で5万〜10万くらいだそうです。(金額は撮影時の造影剤の量により変わりますで、2kg以下の小型犬で5万くらい、大型犬で10万円くらいです。)
※ 初診料、再診料、検査費用、お薬の費用は動物病院や大学病院によって異なりますので、上記は参考とし、金額は診察をうける施設に事前にお問い合わせください。
てんかんのお薬の副作用はある?
薬を与える以上は副作用はあります。これはどの薬にも必ずあるといってよいものです。抗てんかん薬の副作用としては、肝障害や沈鬱、躁状態などが一般的です。
人間の抗てんかん剤を飲ませてもいいの?
人間の薬である抗てんかん剤、デグレトール(カルバマゼピン)も犬の抗癲癇薬として使用されることはありますが、用量は人と全然違います(体重当たりの用量も違います)。抗てんかん薬を自己判断で投与することはお勧めできません。いずれも、必ず獣医師の処方を受けて使用して下さい。
けいれんが30分など長く続く場合
けいれんがおきた際、犬の場合はてんかん発作の可能性が高いですが、けいれんや発作が10分以上つづく、1時間〜2時間など長時間つづく場合は、ほかの病気も考えられます。
脳に腫瘍ができているとこのようになる可能性などもあるため大きな病院でCTスキャンなどの検査を受けることをお勧めします。
【関連リンク】犬や猫が痙攣をおこす、意識を失う場合に疑う病気の症状とその対処法
痙攣(けいれん)を起こしたり意識を失うような病気はそれほど多くはありませんが、急を要するものが多いので注意が必要です。観察のポイントや病気の症状、考えられる主な病気を紹介します。
まずは落ち着いて対処して
発作がおこると、ペットよりも飼い主の方が動揺してしまいがちですが、まずは落ち着いて対処しましょう。1回のけいれんや失神で死に至ることはめったに起こることではないので、犬が倒れたり暴れたりしてケガをしないように安全な場所にうつして。抱っこしたり揺らしたりしないように気をつけてください。
また、前触れもなく発作がおこったように見えがちですが、慣れてくると、前兆がわかってくることも。普段と違って不安げにうろうろする、飼い主のそばに寄ってくるなど、普段と違う行動を始めることが、発作の前兆として現れることがあります。普段からよく観察してみてくださいね。
みなさんの愛犬・愛猫が早くよくなりますように…。
参考資料:てんかん様症状に対する脳波検査
てんかん様症状に対する脳波検査
鳥取大学農学部共同獣医学科 獣医臨床検査学教室